会議のたびに、録音を聞き直しながら議事録を書く。1時間の会議に、まとめの作業がもう1時間かかる。そんな職場は少なくありません。
AIを使えば、この時間は大きく短くできます。ただし、「AIに音声を渡せば議事録ができあがる」と考えると、うまくいかないことがあります。ここでは、毎週の無料セミナーで取り上げてきた内容をもとに、議事録づくりをAIで短くする流れと、作った議事録を次の仕事につなげるコツをまとめます。
「文字起こし」と「議事録づくり」は別の作業
議事録づくりがうまく進まない原因の多くは、2つの作業をまとめて一度にやろうとしていることにあります。
- 文字起こし:音声を、速く正確に文字にする作業
- 議事録づくり:文字になった会話を整理し、決まったことや宿題をまとめる作業
たとえば、ChatGPT のような対話型のAIは、文章の整理や要約は得意です。一方で、文字起こしが得意な道具は、話した内容をそのまま文字にするのは速くても、まとめはしてくれません。道具によっては、誰が話したかの区別(話者の区別)ができないものもあります。
そこで、文字起こしは文字起こしの道具で、まとめは対話型のAIで、と役割を分けます。これだけで、無料の範囲の道具でもかなりのところまでできるようになります。
録音から議事録までの4つのステップ
1. 録音する
オンライン会議なら、会議ツールの録画・録音機能や、会議を自動で記録してくれるAIのノート機能が使えます。対面の会議では、スマートフォンのアプリや小型の録音機を使います。録音ボタンの押し忘れが心配な場合は、録音専用の機器を予備として併用すると安心です。
録音する前には、参加者に「記録のために録音します」と一言伝えておきましょう。
2. 文字起こしをする
文字起こしの道具は、無料で試せるものから月額のサービスまでさまざまです。選ぶときは次の点を見ます。
- 話者を区別できるか
- 1回にどのくらいの長さまで扱えるか
- スマートフォンから手軽に使えるか
- 会社として使ってよいサービスか(データの扱いが明記されているか)
たまに使う程度なら無料の範囲で十分なことも多く、毎日のように使うなら月額のサービスを検討する、という順番がおすすめです。
3. 要約して議事録にする
文字起こしの結果を対話型のAIに渡し、決まった形にまとめてもらいます。毎回同じ指示を書くのは手間なので、議事録の「型」を決めて、使い回せるように保存しておくと楽になります。
- 会議名・日時・参加者
- 決まったこと
- 決まらず持ち越しになったこと
- 宿題(誰が・何を・いつまでに)
お客様に共有する商談記録と、社内向けのタスク中心の記録とで、型を分けておくのもよい方法です。
4. タスクを書き出す
最後に、議事録から「誰が・何を・いつまでに」を抜き出します。AIに「この議事録から、担当者ごとのタスクを一覧にして」と頼めば、たたき台はすぐにできます。
議事録を「作って終わり」にしない
AIで議事録が簡単に作れるようになった一方で、新しい問題も出てきています。作った議事録が見られない・探せない・つながらない・動かない、という問題です。前回の会議と同じ議論をくり返してしまうのも、よくある例です。
セミナーでおすすめしているのは、議事録を「記録」ではなく「次の行動の起点」と考えることです。
- 会議の前にアジェンダ(議題)を作る:報告すること、話し合うことを書き出しておきます。アジェンダを作った人が、会議の流れをリードしやすくなります。
- 議事録でアジェンダを更新する:会議のあと、「話し合えたこと」「持ち越しになったこと」「議題になかったが話題に出たこと」の3つに分けて書き込みます。
- そこからタスクを作る:決まったことに担当と期限をつけ、タスクとして管理します。
こうすると、議事録・タスク・プロジェクトが一本の線でつながり、会議で決まったことが実行に移りやすくなります。
ある建設会社では、営業担当がお客様の要望を記憶に頼って社内に伝えていたため、伝え漏れや「言った・言わない」が起きていました。商談を録音して議事録にし、お客様にも内容を確認してもらう運用にすることで、こうした行き違いを減らす取り組みを進めています。
気をつけたいこと
- 話者の取り違えを確かめる:複数人の会議では、AIがAさんの発言をBさんの発言として記録することがあります。タスクを書き出す前に、内容を人が確かめます。
- 社外秘の会議の扱い:取引条件や人事の話など、扱いに注意が必要な会議を、どの道具で記録してよいかを先に決めておきます。
- 数字や固有名詞は必ず見直す:金額、日付、人名、地名は聞き間違いが起きやすいところです。
まとめ
- 文字起こしとまとめは別の作業。道具の役割を分けると、無料の範囲でもかなり短くできる
- 録音 → 文字起こし → 型に沿った要約 → タスクの書き出し、の4ステップで進める
- 議事録は「次の行動の起点」。アジェンダの更新とタスクにつなげて、はじめて仕事が動く
- 話者や数字は、人が確かめてから使う
AIへの頼み方の基本は、中小企業がAIを使い始める前に知っておきたい全体像でもご紹介しています。社内で議事録づくりの流れをまとめて整えたい場合は、AI社員研修のカリキュラム例をご覧ください。
文:嶺本高志(デジタルレイバーズ代表)